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宮川香山 「共箱」の話

日本の骨董屋さんや古美術商の世界では、共箱付かどうかで評価が大きく変わるというのを良く耳にします。

デパートなどでも、骨董を扱う場合共箱付の商品しか扱わないというところもあるようです。

このデパートの方に理由を尋ねたところ、「本物か贋物がどうかを判断する上で、共箱があればより本物である確証が高まるから」と説明されたことがあります。

初代 真葛香山(宮川香山)の作品は、時代背景や、また海外での評価が非常に高かったこともあり、その多くが輸出されました。

従いまして、今、初代真葛香山の作品を購入しようとするとどうしても、海外から買い戻すといういわゆる「里帰り」の品物を探すということになります。

海外からの里帰りの真葛焼を見てみますと、そのほとんど、自分の経験では約90パーセントくらいが共箱がない状態で見つかります。

「海外では、箱を大切にするという習慣がないので、捨ててしまう」という話を以前聞いたことがあるのですが、それにしても、共箱がないものが多すぎるのです。

私は、もしかしたら、海外に持ち帰るために購入された真葛焼には、最初から共箱がなかったのではないか、、と考えるようになってきました。

当時は、舗装も無い砂利道を荷車で運搬し、その後も荒波を越えていく船での輸送で、かつ場合によっては数ヶ月もかかる長旅です。

共箱は蔵などでの保存や、人が手に抱えて運ぶような場合には適しているかもしれませんが、荷車や船蔵での長期輸送には適していないのではと思います。

ここに当時の輸出陶磁器を梱包している一枚の写真があります。

DSC01020.jpg
神奈川県立歴史博物館蔵

この写真をよく見てみますと、わらのような、紐のようなものを何重にもぐるぐる巻きにしています。

これであればちょっとした衝撃があっても、花瓶が割れたりすることもなさそうです。

ただ、この米俵のような状態で、共箱に入れることは出来るでしょうか?

俵のようにぐるぐる巻きにされた後、単なる木箱に入れ出荷していたのでは、と思うのです。

でも、ごく稀に、アメリカやイギリスで共箱付の真葛の花瓶に遭遇することもあります。

ただ、たいていこの場合は、店主に尋ねますと、「近年(数年以内の間)日本から仕入れてきたもの」という答えが返ってきます。

つまり当時輸出されたものではない場合がほとんどなのです。

最初に申し上げましたが、明治や大正初期に輸出された高浮彫りや釉下彩の花瓶などの里帰り品で、共箱がついていたものをほとんど目にしたことがありません。

当時輸出された真葛焼の作品には最初から共箱がついていなかったものが多く存在するのではと思います。

輸出陶磁器の梱包方法に関しましては、今後の研究課題として、より多くの資料に当ろうと考えています。

いずれにしましても、重要なのは「作品自体」ですので、共箱のあるなしでその評価が大きく変わってしまうのは残念でなりません。

共箱はなくてはならないものではなく、付いていれば尚良いというものだと思うのです。

ちょっと生意気なことを言ってしまいました(汗)すいません。。。


今日もブログをみて頂いてありがとうございました!
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