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「日本人は世界一間抜けな美術品コレクター」

「日本人は世界一間抜けな美術品コレクター」という本を読みました。

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新美康明著 光文社

タイトルを見て、おもしろそうなので購入した本なのですが、とても考えさせられることが多く、興味深い本でしたので、ご紹介したいと思います。

すごくお勧めです。

核心にはできるだけふれず、一部のみ引用させて頂きます。

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背表紙には、「人気があるのは、中国や韓国の美術作品ばかりなのだ。(中略)日本人が「投資としての美術品」と「文化としての美術品」の区別がつかないからだ。きちんとした価値観がないから、世界から笑われる。」と書かれています。


「これまで著者は日本人を、世界でも有数に文化レベルが高く、アートへの理解と情熱に満ちた人々だと信じてきた。しかし、近年では、そうとは言えなくなった。」

「彼ら(新興富裕層)にとっての価値基準は「数字」だ。つまり金額が高ければ高いだけ素晴らしいのである。とにかく金額の高いものを所有すること、それが成功の証なのである。」

「美術品は確かにステータスにはなるのだが、金額が価値のすべてではない。またその価値を知るためには、教養も品格も要求される。」

「ニューリッチの子どもたちが留学する米国の大学教授が、こう嘆いていた。「日本人学生は、欧米のブランド品について驚くほど詳しい。そしてそれをまた所有している。けれど、日本の文化について何か説明してほしくても、知識さえ持ちあわせていない。まして、体験もしていない。これはいったい全体どういうこと!?」」

「アルノーは、来日前、「日本人は文化への意識が高く最先端の感覚を持つ一方で、歴史ある作品に敬意を払う国民。新しい美術館が次々生まれる東京も、フランスやアメリカと同じように、質が高くアートへの情熱に満ちた場所だと思っていた」という。ところが、日本に来て実際に見てみたら、それはまったくの幻想だったと思いしらされたというのだ。「なんて貧弱なコレクション!なんてお粗末な展示!学芸員がほかの誰かの選んだ作品を壁にかけるだけの、空っぽの空間ではないか。これで美術館と名乗るのは詐欺に等しい」」

「アルノーは続けて、「リスクを背負いながら自らの視点を貫いて作品を選び、展覧会を開催するといったすぐれた美術館、学芸員もいない」」

「「自国の芸術文化を愛すること」ができなければ、アイデンティティーのない国民として見下されるだけだ。それは古今東西で変わらない真理のようなものである。自国の文化を愛すること。それはすなわち、自国の文化と同じように、他国の文化も尊重することでもある。」

「わが国には、世界的にも優れた美術工芸を創りだしてきた伝統と技術がある。」

「技術は一度失われれば、容易に復活はしない。まったくもって本当にもったいないことだが、その「もったいない」という言葉の概念さえ、海外から評価されてあらためて気付かされたわが日本である。」

「もし、子どもたちが、現に身近にある、長きにわたる伝統に培われたすばらしい美術品に価値を見い出し、創造する担い手になってくれたら、、、美術品とまで言わなくても、小さな工芸品でも構わない。その貴重さに気づき、将来、購入するようになってくれたら、、。そうすれば、地方にあまたある伝統産業もあるいは息を吹きかえすかもしれない。かつて、パリ万博で世界中を感嘆させたように、ふたたび「芸術大国」として世界的に脚光を浴びることになるかもしれない。」

「もの(美術品)と付き合うということは、結局は自分の魂を磨くことであると思います。文人の理想とする芸術は、ただきれいというだけでなく、人々に徳を与え、魂を磨いてくれるものなのです。ものは、知識だけ積んだだけでは決して見えてきません。本当に「ものが見える」ためには、何より愛情が必要です。」

「今こそ、世界にいちばん求められるのが、自然を文明でコントロールするのではなく、自然と共生する芸術文化なのである。」

「自然を耕しながら、自然のまま放置しておくのではなく、多くの植物や昆虫や生物が息づく里山を形成してきた、そんな私たち日本人の感性と、そこで培われた芸術文化は、いざ求められさえすれば、行き詰る文明社会に新たな道を示唆する大きな役割を果たすことができるのではないか。」

「虫の音に風流を感じる。華麗な色合いにも地味な色にも美意識を感得する。そんな民族は、世界に日本人くらいなものである。」

「私たちが日本文化を愛し、理解し、その意義をきちんと世界に伝える。その上で、日本文化は初めて世界に羽ばたくことができるのである。」

とても考えさせられる本でした。

ジャポニスムが起こったとき、西洋では産業革命による機械化大量生産時代に疲れきっていたときでした。

いま、世界はサブプライム問題、リーマンショック、原油高、温暖化と、文明化によるひずみが大きくなってきていると思います。

そんなときだからこそ、今こそ、自然を愛した日本の芸術文化が、心のやすらぎになるのかもしれません。

「日本人は世界一間抜けな美術品コレクター」おすすめの本です。


今日もブログを見ていただきありがとうございました。
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コメント 2

吉谷 将史

考えさせられる内容ですね。

私は、西九州に住むだけに陶器市には暇があれば出かけます。そこで作品の質以上にブランド力で売る所もあれば、無名でも”轆轤”、”染付け”、どちらにも作者の想いが伝わる素晴らしい作品が混在しています。違いがわからない買い手が悪いのか、こだわりを見失った作り手が悪いのか、どちらにせよ、日本の伝統工芸が瀕死の状態にあることは確かですね。

私が好きな三川内焼は今も家内工業中心で「平戸焼」の伝統と匠の技を現代に伝えています。香山の竹林とは異なりますが、白磁に藍一色の呉須で、壮大な「竹林絵」を描く”嘉久正”窯は一見の価値ありです。
http://www.japanpotterynet.com/jp/user_data/kilns038.php
by 吉谷 将史 (2011-10-28 18:40) 

眞葛 博士 (まくず ひろし)

吉谷 将史さま

出張続きで、コメントのアップと返信が遅れまして、申し訳ございませんでした。九州の陶磁器の情報もありがとうございます。なぜか平戸焼にも魅かれます(笑)そちらについても、いろいろと勉強していきたいと思います。今後とも宜しくお願い致します。

眞葛博士
by 眞葛 博士 (まくず ひろし) (2011-11-12 01:23) 

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