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宮川香山紀行 虫明 (2)

車を降りるとすぐに漂う「牛舎」の香り(笑)

そして、後ろを振り返ると、そこには明治時代から変わっていないであろう、美しい田園風景が広がっていました。

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本当に美しい景色です!!

きっと真葛香山はこの景色を見ながら、自ら作品を製作したり、指導をしたんだろうと思います。

I さんは、私に近寄ってきて、指を差しながらいろいろと説明をしてくれました。

(岡山弁といいますか、言葉の語尾に「~じゃぁ」とつく話し方だったのですが、言葉を正確に覚えていないので(笑)以下、 I さんの言葉の部分が、岡山弁だかなんだか、変な表記になっちゃいます。すいません(汗)、、、。)

「あっちの方が、文献でよく間口窯と言われてる、香山時代の虫明の窯じゃ。

本当は「立場」って言った方が正しいんだけどな。立場窯じゃ。」

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何気なく前方の地面を見てみると、ごろごろ、ごろごろたくさんの破片が落ちています。

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窯の跡地の周辺はこうなんだなあ、、、と実感します。

「そこに水路があるじゃろ。昔は今とだいぶ景色も違っていて、あの橋のところから海に荷物を運び出したりしとったんじゃ。」

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昔はきっと海がもっと近くまで迫っていて、すばらしい海の景色がこの先に広がっていたんだと思います。

「正面向って右側の斜面、あそこから古い陶磁器の破片がようでるんじゃ」

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完全に雑草が生い茂っていて、ちょっとした山になってしまっています。
あの山の中に分け入って、掘ってみたいなあ、、、という衝動にかられてしまいます(笑)

「正面のところの奥に香山の窯があったんじゃ。」

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「ここに存在してたんだあ!!この場所に来れたことを本当にうれしく感じました。」

「今も正面の手前のところに窯が見えて、それは古い大きな窯を改造して小さくして作った窯なんじゃ。」

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「正面の斜面と地面との境い目あたり、たくさん陶磁器の破片がある。虫明焼は普通の生活陶器もたくさん作ってたから、ああやって、破片がごろごろあるんじゃ。あれは比較的新しい時代のだけどな。」

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本当にすごい破片の量です!!
思わず、銘の入っている破片がないか探してしまいました。

横浜の香山の窯の敷地も、地面には砂利のように破片が一面にころがっていたということですから、このような感じだったんでしょうね。

こちらは見ること、聞くこと、興味深いことばかりで、感動してあたふたしているうちに、I さんは矢継ぎ早にどんどん説明をしてくれます(笑)

I さん、説明が早すぎです(笑)

この間口(立場)窯は、初代清風与平が築いたと言われる窯で、後に二代清風与平、宮川長平(香山のお兄さん)、宮川香山、森香洲などが制作に当っていた由緒ある場所です。

しかし、この地が、京焼の名工たちが訪れ、指導した場所であることを示す看板や表示は何もなく、地元の方に聞かなければ、地図で見ただけでは、恐らく見つけることはできない場所でした。

場所を教えて下さったI さんに本当に感謝です!

場所が分かった僕は、あまり I さんに時間をとらせてはいけないと思い、「後ほどゆっくりまた見に来ますので、I さんのお持ちの資料など見せていただけませんでしょうか。」とお願いをし、早速 I さんのご自宅まで伺わせて頂くことになりました。

なんと、I さんは、この窯跡から車でわずか1分くらいのところにお住まいでした。

ご自宅の玄関からの眺めも最高です。

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横浜の中心部に住んでると見えるのはコンクリートのビルやひしめきあった建物ばかりで、廃棄ガスで曇った空しかみれません。

緑や澄んだ風が、こんなに心地のよいものかと、自然のやすらぎを実感します。

お部屋に上がらせて頂いて、最初に目にしたのは、書棚いっぱいの虫明焼に関する文献やスクラップブックなどの資料、資料、資料でした。

とても趣味でやっているという感じではありません(笑)

ボクも人のことを言えないんですけどね。。。(汗)

ある意味ちょっとした研究者以上の資料の量です!

他の部屋も相当占領してしまっているようです(笑)

しかもそれらは相当に年期が入っています。

「I さんは何歳くらいのころから、虫明焼に興味をもたれて集めたり、調べたりされてるんですか?」

「もう、高校生のときからじゃ。詰襟着て、オークションに参加して、集めとったんじゃ(笑)」

すごすぎです。もう虫明焼一筋30年以上ということになります。

I さんから比べると僕なんて、「ひよっこ」もいいところです。

「早速ですが、真葛香山の制作した虫明焼ってそんなに少ないんですか?」

一番質問したかったことを、真っ先にうかがいました。

「そりゃあ、ホントに少ない。文献やら図録やらに載ってる作品であっても、よくない(本物ではない)ものがたくさんある。」

おもむろに、本棚から何冊かの文献や図録を取り出され、香山作の虫明焼と紹介されている写真についてひとつひとつ

「これはいい、これはいけない、これもいけない、これもだめじゃ。これはいい。」

という感じで、作風の特徴や、なぜそう思われるのかといった根拠まで付け加えて、解説をしてくれました。

解説して下さった本のうち何冊かは、僕も持っていて、僕も香山作の虫明焼だと信じていた作品も多かったので、とても驚きました。

普通、こういう本に紹介されていると、本物だと鵜呑みにしてしまいがちですが、「よくない」ものも多いんだなぁ、、と非常に勉強になりました。

I さんから話を聞いて、実感したことは、本当に香山作の虫明焼は少ないということでした。

「破片でも構わないのですが、本物の香山の印の入った作品を見せて頂けませんでしょうか?」

「破片ならいくつも持ってるよ。」

と破片がたくさん入った箱を見せてくださいました。

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真葛香山が明治のはじめに虫明で制作した茶碗です!!

本物中の本物の、香山作の虫明焼が目の前にあるのです!!

香山の虫明滞在はおよそ二年ほどの短い期間と言われています。

横浜滞在期間は約45年ですから、いかに作品数が少ないかは容易に想像できます。

横浜時代の初代香山の作品ですら、今では骨董屋さんなどでも見つけることは非常に困難なんです。

香山の虫明焼が、今手元にあるのです。

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I さんがお持ちの貴重な資料は、これらだけではありませんでした。

I さんのご自宅での虫明談義は3時間近く続きます。

明日は、それらの中から、ひよっこ真葛博士がチョイスした貴重な資料を2,3点紹介させて頂きたいと思います。

「虫明紀行」はあとちょっとだけ続きます。



今日もブログを見ていただきありがとうございました。


忘れました。香山はやっぱりすごいんです!!









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