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真葛香山 「学芸員ネット」記事 10月24日付『神奈川新聞』より

皆さん、おはようございます。

10月24日付の神奈川新聞「学芸員ネット」に原稿を書かせて頂きました。一人でも多くの方に眞葛焼の魅力を知って頂きたいという思いで執筆しました。

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平成24年10月24日付 神奈川新聞より

今、横浜では「宮川香山 眞葛ミュージアム」と「神奈川県立歴史博物館」の両方で、宮川香山の眞葛焼を見ることができます。秋の散策がてら、両方をはしごして横浜散策を楽しまれてはいかがでしょう~(笑)  眞葛 博士


精緻な細工と色彩の魔術
   宮川香山 眞葛ミュージアム
 ~ 世界に愛された真葛焼 ~

 近年、宮川香山の作品が再評価されつつある。テレビや雑誌、神奈川県立歴史博物館での常設展示など、作品が紹介される機会も増えてきている。
 真葛焼は、1871(明治四)年、横浜の太田村(現在の横浜市南区)に初代宮川香山が輸出向けの陶磁器を製作するため真葛窯を開窯し、製作したやきものである。国内外の博覧会で輝かしい受賞を重ね、二代、三代と続いたが、横浜大空襲により甚大な被害を受け、窯は閉鎖に追い込まれた。
 1881(明治十四)年頃までは、鳥や蟹、昆虫等を、器の周りに精緻な細工で表現した作品が多く製作された。まるで生きているかのような細工が、超絶技巧として近年再び注目を集めているのである。

 また初代宮川香山は、生涯を通じ、その作風を大きく変化させていったことでも知られている。常に「進歩」を重んじ、新たな釉薬や釉法の研究開発を行い、それらを自らの作品に反映していったのである。精緻な細工の次に香山が辿り着いたのは、優美な色彩であった。
 
ワシントンのポトマック河畔に桜並木をつくることを提唱し、その実現に貢献した紀行作家のエリザ・R・シドモアは、1898(明治三十一)年頃、真葛窯を訪問し、こう記している。
「存命中の作家で最も工夫に富み、最も天才的な陶工は疑いなく宮川香山である。〔中略〕桃釉、薄緑釉、紫釉、枯葉色の褐釉、鏡面のような黒釉、パールがかった灰釉、月光のような青釉、中国皇帝が身に纏うような黄釉、珊瑚のようなオレンジ釉、赤雲釉と様々な釉薬を生み出した。〔中略〕コペンハーゲンの陶芸家は太田の魔術師(香山のこと)のこの名品をこぞって真似ようとしたものである」(1898年1月22日付”HARPER’S WEEKLY”より)

 
 この時期に製作された興味深い真葛焼を、アムステルダム、ロンドン、カリフォルニアで三点発見した。日本から輸出された真葛焼に、欧米の銀製品メーカーがシルバーの装飾を施した作品である。刻印により、二点はロンドンの” William Comyns &Sons Ltd”で、もう一点はサンフランシスコの”SHREVE & CO”で製作されたことが確認できた。とても珍しいコラボレーション作品であり、研究の上でも貴重な資料となる。

 超絶技巧に注目が集まる宮川香山であるが、魔術師と評されたその色彩美にも、世界に愛された魅力が溢れているのである。

(宮川香山 眞葛ミュージアム館長・山本博士)


 宮川香山 眞葛ミュージアムは、平成二十二年に横浜駅徒歩8分のポートサイド地区に開館。宮川香山作品を常設展示する専用施設で、年に3~4回の企画展を開催している。現在同ミュージアムでは、宮川香山の色彩美にスポットを当てた企画展を開催中。海外の銀製品メーカーとのコラボレーション作品3点も展示している。問い合わせは、℡045(534)6853


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精緻な細工を施した初期の超絶技巧作品


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米国SHREVE & COにより銀の装飾が施された作品
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