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真葛香山 釉下彩作品の評価


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東京国立博物館所蔵 シカゴ万博出品受賞作 「墨梅図花瓶」

香山の釉下彩作品の代表作です。

いとも簡単にさらっと制作してしまったかのように見えるこの花瓶。

実はこの発色をさせるには、相当の経験と技術が必要とされるのです。

みなさんも、ホットケーキとか、パンを焼いたことがあると思います。

自分の思い描いた、こんがりとしたキツネ色をムラなく出すのはなかなか難しいですよね。

やきものは、それを、さらにさらに難しくさせたようなもので、ムラなく仕上げるためには、窯の中の温度が均一でなくてはだめで、かつ自分の思い描いた色を出すためには、繊細かつ微妙な温度管理が必要とされるのです。

もちろんきれいな発色をさせるには、釉薬自体の調合にも相当な経験が要求されます。

この作品に対する評価は、ジャパンウィークリーメール「シカゴの日本磁器」の中に記載がありますので、引用したいと思います。

「丈の高い、優雅な形をした花瓶で、繊細な藁黄色の釉薬に覆われており、釉下には暗褐色による梅の小枝と花びらの模様が美しく配されている。もしもこの花瓶を目にする人々に何の知識も与えられないのだとすれば、彼らは、自分たちが上絵付によって装飾されたありきたりの作品をみているのだと結論し、したがって、その最も大切な美点を理解しそこなってしまうに違いない。というのも、香山の藁黄色のような魅力ある柔らかな釉薬を伴う高温下での釉下彩を作り出せる陶工というのは、世界にもそう多くはいないからである。」ジャパンウィークリーメール「シカゴの日本磁器」明治26年3月4日

つまり、大事なポイントは、この梅の絵が、上絵付け(釉薬の上に絵を描く技法)ではなく、柔らかな黄色の釉薬の下で梅の暗褐色を発色させるという釉下彩の技法で制作されているところにあるのです。

釉薬の下に描かれた絵は、花瓶にしっくりとなじむように発色し、全体に施された黄色の釉薬と一体感をもち、柔らかな雰囲気を作りあげます。

釉下彩の技法を用いて、香山は、さまざまな色調を表現する技術を見につけていました。

自分の思い描いたとおりの発色をさせるには、温度をある一定の幅に納めて温度管理をする必要がありますし、また焼成時間や温度で刻々とその色を変えていってしまう(窯変性)釉薬も多いため、高度の技術と経験が要求されるのです。

また、釉薬の温度管理だけに気をとられてしまいますと、花瓶自体にヒビや割れが生じることもあります。

温度計も使わずに数色の微妙な色調を表現するには、研究と経験なくしては決して実現できないものなのです。

現代になって、各種センサーの発達で温度管理はしやすくなりました。

釉薬も、化学知識の応用により、簡単にさまざまな発色ができるようになりました。

しかしながら、香山が出したような微妙な色の再現は難しいとよく耳にします。

機械化された現代の窯と、化学調合された釉薬では、微妙な色調の表現が非常に困難なのです。

「高浮彫りの彫刻」も今では作ることが難しい技術ですが、香山が作りあげた「釉下彩の微妙な色調」も現代ではもう再現が難しいものとなってきているのです。

やっぱり香山はすごいんです!

今日もブログを見て頂いてありがとうございました。

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